国際ベンチャーの時代
Abroad Canada
http://www.abroadcanada.com/

中村鋭司さん
中央大学文学部卒業後、10余年間公立中学の教師として10年働く。教科指導のほか生徒指導やカウンセリングを担当。その後、学習塾、物販の会社を設立し15年経営。2年前、家族(配偶者はカナダ人)がカナダに帰国すると同時に、会社を精算してカナダ移民を決意。今年10月バンクーバーで留学・ワーホリカウンセリングセンターを行うAbroad Canada社を設立。

中村さんがカナダに始めて来たのは20年前になる。それまで海外旅行の経験もなかったが、日本で知りあったカナダ人女性と結婚式をあげるために来加したのだった。それまでに妻となる女性の両親とも会ったことはなく、外国の結婚式の習慣も知らず、もちろんカナダについての知識もなく、団体旅行でくるわけではないので話す人もなく、まるで敵地に乗り込むような気持ちだった。

妻の里はバンクーバー近郊の町にある。まずタイ航空のシアトル経由でアメ リカに入りバンクーバーまで乗り継いだ。当たり前のことだが、シアトル空港につくと周りがすべて英語だらけで外国にきたことを実感した。始めて会う妻の両親をどう呼べばいいかも分からなかったが、“Mr. and Mrs.”と呼ぶように言われた。

結婚式を挙げた後は日本での教員生活に戻り、その後、学習塾、物販の会社を設立して13年間経営した。その間、カナダには何回か訪れたが、生活の場をカナダに移すことになったのは、妻が両親に結婚後20年経ったらカナダに帰ることを約束していたからだ。移民することで最も心配になったのは当然ながら就職だ。バンクーバーには駐在する日本人子女に日本語を教える「日本語学校」があり、以前から頼んでいたため教員として働くことが約束されていたが、パートタイムなためそれ一本では生活ができない。外国での就職が容易でないことはバンクーバーに旅行する回数を重ねた結果実感している。移民した後に就職活動がうまくいかずどうにもならなくなった時のことを考え、レストランで働けるように修業したりもした。そんな中でバンクーバーの日本語新聞の求人広告にファックスで応募したところ、二社から誘いがかかり、 そのうち一社が日本で経営していた事業にも関係のある英会話留学斡旋会社であったため、この会社に就職を決めた。

昨年7月にカナダへの移住が完了。20年前に緊張して着いたバンクーバーも 、今は自分の第二の故郷と思うと感無量だった。20年前と現在を比べて一番大きく変ったのは貨幣価値だと感じる。当時は1ドルが200円前後の時代で円が安かった。バン クーバーも町も随分変った。知人からカナダで買って欲しいと頼まれる物も、昔はカウチンセーターやリーボックのスニーカーなど、今では人気商品とはいえないものばかりだった。

英会話留学斡旋会社に1年間従事した中村さんは、需要がありながら未だにさほど開拓されていないこの仕事の将来性を確信した。

英会話留学先としてはカナダの他にアメリカやオーストラリアが人気があるが、こうした国に留学した人がカナダに移ってくるケースが目立つ。アメリカと比較した場合は費用が約半額なことが大きな理由だ。オーストラリアの場合は、英語学校の質が問われている。受講さえすれば実力とは関係なく進級できる例が多く、大学付属の英会話学校などは、非常に容易に生徒を大学に転入させている。一見ありがたい話のようだが、一端、大学に入ると実力のなさが成績に現れ、悪い成績では当然進級も卒業もできず、他の大学にも転向できずに止める人が多い、ということだ。カナダでは一定の英語力がなければ入学できないので、こうした例はほとんど聞かない。

教育者であった中村さんは、英会話を上達させる勉強方法と、英語教育の“ 誤解”についても強い意見を持っている。

まず上達の方法には単語を覚えることの重要性を挙げている。これは英会話の実力がある人でこそ指摘できるポイントだ。最近は電子辞書が大流行で本当の辞書を持っていない人が多いが、「電子辞書は単語を覚えるのには役立たない」「本物の辞書をひくと一つの単語にも色々な説明があり、その単語の物語が出ている。一つ一つの単語の物語が面白いと感じられなければ単語は頭には入らない」と確信している。

また英語上達の誤解については、「英語社会にいれば自然に英語が上達すると思うのは間違いだ。周りに日本人がいない場所で暮らしても英語が上達しない人は沢山いる。また日本で英会話が上達する人もいる。日本で準備をしっかりしてくればくる程、留学中の効果が上る」という。

英会話学校の留学地としてカナダに自信が持てるうえ、英会話学校の需要については確信を持つ中村さんはますますこの仕事の可能性に魅かれ、今年10月に独立してAbroad Canada留学・ワーホリセンターを設立した。業務内容は、留学/ワーホ リのカウンセリング、留学手続き代行、留学エージェント養成講座、日本語塾などを柱とするもので、集客は日本で提携した留学斡旋業者を通じても行うが、インターネット上で受講者からオーダーを直接とることに重点を置いている。それだけにHPの内容は毎日のように更新し、問合せのメールには必ず返事を送っている。

事務所を開けた時はNYのテロ事件の影響を心配したが、来春のオーダーがすでに入りだしていて、現在の時点ではそれほど影響を受けたようには感じていない。 将来は現在の4つの業務内容を発展させ、幅広いサービスを提供する構想を持っている。